SANKEN ARCHITECTS laboratory住宅にまつわる研究レポートとコラム

断熱性能を示すもう一つの指標『Q値』とは?

date_range2025-7-07
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高気密高断熱住宅を検討する際、「Ua値(ユーエーち)」という言葉をよく耳にするかと思います。Ua値は国が定めている断熱性能の指標であり、住宅の断熱性を測る上で非常に重要な数値です。しかし、実はUa値以外にも、かつて断熱性能を示す指標として使われていた「Q値(キューち)」というものがあります。

三建の営業担当である横田が、このQ値について深掘りし、さらに断熱性能の数値だけを追い求めることの落とし穴について解説します。

Q値とUa値、何が違うの?

まず、Q値とUa値の最も大きな違いは、その計算方法にあります。

Ua値:建物外皮(屋根、壁、床、基礎など)全体の平均的な熱の逃げやすさを示す指標です。「熱損失量 ÷ 外皮面積」で算出されます。この数値が小さいほど、断熱性能が高いとされています。

Q値:建物の床面積あたりの熱の逃げやすさを示す指標です。「総熱損失量 ÷ 床面積」で算出されます。

一見すると似ていますが、分母が「外皮面積」か「床面積」かという点が大きく異なります。この違いにより、建物の形状がQ値に大きく影響を与えることになります。

例えば、同じ床面積100㎡の家でも、正方形に近い形と長方形の細長い形では、外周の長さが異なります。外周が長い(=外皮面積が大きい)家ほど熱が逃げやすくなるため、Q値の計算では不利になります。

横田が指摘するように、Q値を良くしようとすると、熱損失の量が減る正方形に近い形状の家が有利になります。一方で、Ua値は外皮面積あたりの平均値であるため、建物の形状による影響を受けにくいという特徴があります。例えば、平屋は屋根の面積が大きくなるため、屋根の断熱性能が良い場合、Ua値が良くなる傾向にあります。


なぜ今、Ua値が主流なのか?

以前はQ値も断熱性能の指標として使われていましたが、現在は国が定める基準としてはUa値が採用されています。その背景には、Q値が建物の形状に大きく左右されるという特性があります。

極端な話、Q値を追求するあまり、L型やコの字型といったデザイン性の高い間取りが不利になるケースが出てきます。しかし、それでは施主の希望や土地の形状に合わせた自由な家づくりが難しくなってしまいます。


Q値は無視していいのか?

では、Q値は古い指標だからといって、無視しても良いのでしょうか?

Q値を良くするということは、熱損失を少なくするということ。これはつまり、省エネ性能が良い家であると言い換えられます。熱が逃げにくい家はエアコンの効きが良く、光熱費を抑えることが可能です。この点においては、Ua値よりもQ値の方が省エネ性という観点では望ましいと言えるでしょう。


数字を追い求めた先の「落とし穴」

しかし、省エネ性能が良いからといって、数字だけを追い求めて正方形の家を建てるのが本当に最適なのでしょうか?

横田は、「住みやすい間取り」「土地に合った間取り」の重要性を強調します。限られた土地の形状や、家族構成、ライフスタイルによって、最適な間取りは異なります。例えば、大きな窓から庭を眺めたい、中庭のあるL字型の家がいい、といった希望がある場合、数字だけを追い求めると、そうした理想の住まいを諦めざるを得なくなる可能性があります。

もちろん、熱が逃げやすい窓を大きくすれば、その分断熱性能は下がります。しかし、だからといって窓を小さくすれば良いというわけではありません。横田は「大きな窓を取るなら、性能の良い窓にしましょう」と提案します。このように、一つ一つの要素に対して適切な対策を積み重ねていくことで、結果的に住みやすく、満足度の高い家が実現できると語ります。


大切なのは「バランス」と「総合的な視点」

最終的に、住宅の性能を考える上で大切なのは、「バランス」「総合的な視点」です。

省エネが最優先であればQ値に重きを置くのも良いでしょう。しかし、「年中快適に過ごしたい」という目的であれば、断熱性能だけでなく、湿度換気、そして太陽の光や風を最大限に活用するパッシブデザインといった要素も非常に重要になってきます。

「性能はいいけど住みにくい間取り」では意味がありません。施主の希望や家族の健康、発達といった要素も考慮し、総合的に設計された家こそが、本当に「建てて良かった」と思える家になるのです。


どこに重点を置くか

住宅には多くの数値が存在するため、どこに重点を置くか悩む方もいるかもしれません。三建ではUa値にももちろんこだわっていますが、Q値も含めて相談に乗り、数値だけに囚われず、施主のライフスタイルや理想の暮らしに合わせた「総合的な家づくり」を最も大切にしています。

住宅会社を選ぶ際は、単に数値の良さだけでなく、あなたの理想を理解し、バランスの取れた提案をしてくれる担当者や会社を選ぶことが、後悔しない家づくりの鍵となるでしょう。


わたしたちSANKEN ARCHITECTSは、兵庫県加古川市に本社を構える創業48年の住宅会社です。

「わたしたちSANKEN ARCHITECTSの家づくり」にご興味を持っていただけたら嬉しいです。

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