SANKEN ARCHITECTS laboratory住宅にまつわる研究レポートとコラム

「小さな家」は工夫が満載?!設計士の間取りの工夫とは?

date_range2022-11-03
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こんにちは。株式会社三建副社長の中澤です。

皆さんは、家づくりを進める上でたくさんのご要望があると思います。

全ての要望を満たそうとすると、どうしても家が大きくなってしまいます。

ただ家が大きくなると建築コストが上がったり、空調効果が落ちたり等、ランニングコストが上がってしまいます。

予算や土地状況などの制約がある中で、要望をできるだけ満たそうとすると必ず工夫が必要になります。

そこで、今回は業界でも注目されている「小さい家」についてまとめていきたいと思います。

要望を満たすには「小さな家」が良い

要望を満たすために家を大きくすることは簡単です。

小さくても要望満たして満足いく家にするには工夫が必要になります。

平面的に考えるのではなく立体的に考えたり、狭く感じない工夫をする、無駄を省くことで無駄を省く等、様々なことを考え併せていかなければいけません。

家づくりにおける理想や夢を叶えた上で、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めた家を小さくコストを抑えつつ質を上げる。

私はその方が豊かな家(生活)になるのでは!?と確信しています。

結果的に、予算を考慮し要望を満たした「小さな家」であるほど、名建築が多いと感じる事が多いのが事実です。

豊かな家・生活とは?

改めて、豊かな家(生活)とどういったものでしょうか?

将来、子供たちが孫を連れて遊びに来たい、居心地が良いと思ってもらえる家

畳スペースやロフト等複数の使い道を考えた空間を活用するということは老後の住まいでも非常に大事になってきます。

省エネで健康的且つ長持ちすることを前提に自分の居場所がある心地よい家

量より質、見た目のカッコよさではなく健康的で長持ちする心地よい住まい。

庭に大きな樹木があり季節を感じる、よい素材やよい家具に囲まれて暮らすこと。

また、小さな家の中に小さなとっておきの心地よさを持った楽しい工夫があり、家族それぞれに小さくても心地の良い居場所をつくることができる家だと思います。

自然に囲まれた家

内装や外装に天然木や自然素材を使い、長い時間の中で経年美化していく素材感を感じられると、自分も自然の中の一部という感覚をも呼び起こしてくれます。

外とのつながりのある家

外とのつながりが最大限になるように工夫された家。

遠くの景色や植栽が見えるところに大きな窓を設けることで、カーテンを閉めることがなく、広がりを感じやすい家となります。

外部のいいものは取り入れて良くないものは見えないようにする。光や風、熱や音、匂いや人・車など外部から入ってくるものを制限してあげることが外とのつながりを最大化にする。


豊かな家(暮らし)とはこういう家ではないでしょうか!?

豊かな暮らしと「小さな家」は抜群に相性が良いと言えます。

「小さな家」を設計する上でのポイント

それでは、具体的に「小さな家」を設計する際にどういうことを考えればいいのでしょうか?

敷地に目いっぱい立てない

そこまで広くない土地であったとしても、しっかりとゆとりを持たせる。

セコセコした感じではなくゆったり感を感じさせるように設計することが重要です。

敷地のゆとりの部分は植栽やお庭やアウトドアリビング的なスペースとして利用した方が楽しい家になります。

また、敷地にゆとりを持たせることで、京都の町家のような、遠回りをして玄関にたどり着く、そんなアプローチの工夫をすると帰宅が楽しみな家に仕上がります。

天井をむやみに高くしない

高さは縦と横のバランスによって感じ方が変わります。

狭い空間で天井を高くすると余計に狭さを感じ、広い空間で天井が低いと余計に低さを感じてしまいます。

よって狭い空間では天井高さが低い方が狭さを感じにくいことになります。

すべての空間の天井が低いと圧迫感があるので、ベースを低くして一部を吹き抜けにする等メリハリをつけるとより楽しい空間となります。

弊社の高砂の家・稲美の家のモデルハウスでは天井高さは220cmしかありませんが、低さを感じさせない工夫が随所に施されています。

照明をたくさん付けない

天井付けの照明は基本的に付けないことが理想的。

天井灯は重心が高く、照明器具の周囲に影ができ落ち着かないので、照明の数を減らし重心を低くするためにブラケット・フロアスタンド・ペンダント照明を多用することがおすすめ。

また、むやみに明るい家は避ける必要があると思います。

光を感じるためには、ただ明るい空間より「木漏れ陽」のように明暗が必要不可欠です。

暮らし(生活)の無駄をそぎ落とす

豊かで小さな家では、無駄な空間や動線を一切省き設計する必要があります。

その上で、既成サイズではなくジャストサイズで検討し、部材に建物を合わせるのではなく建物に合わせて部材を選択し作っていく必要があります。

また、くつろぐ空間として畳の間を作るにしても2帖分のスペースで十分くつろぐことができます。

いたるところにベンチ等心地よい居場所を作ることで、あえて小さな家の中に小さな居場所、それもとっておきの心地よさを持った楽しい工夫を施すことで、小ささを感じることの無い豊かな空間を作り出すことができます。

対角線を活用する

対角線にプランや視線が広がっていくような設計をすることが広く感じさせる肝となります。

正方形の家だと対角線は1辺の1,4倍の長さになり、当然広く感じることができます。

更なる工夫として、コーナーにL型に窓を設けると更に広がりを感じさせることができます。

またダイニングとリビングを対角につなげていくような設計はこれもまた、同じ面積でも広く感じさせる設計となります。

バルコニーを工夫

特に明確な用途がない場合、安易にバルコニーを作るべきではないと思います。

バルコニーは防水のメンテナンスが将来必要になる上に、インナーバルコニーであればサンルームであり物干し場にもなります。

共働きが主流になっている昨今では、外に洗濯物を干しにくい事情等もあるのでインナーバルコニーの方がお勧めです。

庭が十分に活用できない敷地であれば、屋上に大きなバルコニーをとって、アウトドアリビングとして活用していくという方法もあります。

家具も部屋のサイズに合わせて設計する

小さな家を設計する場合は家具のボリューム感への配慮も肝のひとつです。

家具は低めの家具を選択し造作家具を作ることも有効な手段です。

部屋を広く見せる上で家具の奥行きを小さくする、低くするというのは基本ですが、家具を浮かせて取り付けることでボリューム感や圧迫感も減らすこともできるます。

ダイニングテーブルを選ぶ際、小さな家では丸テーブルの方がストレスなく動きまわれるのでお勧めです。

コンセントの高さに注意

スイッチやコンセントの取付高さを取っても、広く感じさせる工夫は可能です。

例えばスイッチの高さを1200㎜⇒1000㎜、コンセント250㎜⇒150㎜に変更して、通常の高さより低めに設置することで、視覚的な圧迫感を取り除くのに加えて、視覚的な錯覚で空間の広さを演出できます。

窓は何のためにあるのか?

小さい家での窓の役割は風通しや日当たりよりも、外の景色を見ることが最優先になります。

役割を意識した上で、むやみやたらに窓をたくさん付けるのではなく、数を減らすということが落ち着いた室内を作り出すコツ。

窓を絞ると豊かな光を感じることができ、木漏れ陽のように光の美しさがよくわかります。

階段やキッチン・収納はコンパクトに考える。

小さな家で機能的、かつ楽しく暮らすために「廻れる動線」を取り入れることは必須です。

特にキッチンを中心に廻れるようにすることが大切で、廻れる動線は住まいに奥行きを感じさせ、動きづらいストレスを解消してくれます。

また、小屋裏やロフトなどを利用して小さくても収納は適材適所に作ることで、収納の充実した暮らしを実現できます。

圧迫感が少なく、生活感を隠すことができるパントリーは必ず作るようにしましょう。

仕切りやクロスを工夫する

外壁(外壁側の壁)と内壁(間仕切り壁)のクロス等の仕上げを変えると広く感じさせることができます。

色や質感の違いは空間の広さや距離感に影響を与えるので、障子や和紙貼った建具を使い柔らかい光を入れる工夫をするのも有効です。

そういった意味では、開き戸ではなく引戸にこだわって設計することも広く見せる工夫になりますね。ただし、開き戸よりも遮音性が悪くなるので注意も必要。

扉を付ける必要のない場所については、フルオープンの建具で外部と内部を心地よくつなぐことでも開放的な空間は演出できます。

最後に…

これから建てる家は、様々な環境変化(自然災害、地震、少家族化、空家問題、デフレ、光熱費の暴騰、共働き化、CO2排出量抑制の公約等)を考え合わせると命を守るための耐震等級3はもちろんのこと制振装置も完備、ランニングコストや健康面を考えると太陽光発電の装着や断熱性能Ua値0.46以下や気密性能C値0.5以下とハード面の高スペック化は最低限必須項目だと思います。

そこを押さえていかなければこれから家を建てるのに10年後には基準を満たしていない家になってしまうことも考えららるからです。

その上で、生活の無駄やコストの無駄を省いていくことにより上記のスペックを満たしながら心地よく住みやすい家、ランニングコストのかからない家を考えていくことがこれからのベストな家づくりだと思います。

また、弊社の「稲美の家」「網干の家」は27-28坪と小さいながらも大きく感じる工夫が随所に施されていますのでぜひお気軽に見学をいただけますと幸いです。

https://www.e-sanken.co.jp/modelhouse/hiyori-himeji/
https://www.e-sanken.co.jp/modelhouse/d-style/

また、ご不明な点や聞きたいことがありましたらわたくし宛でも構いません。

お気軽にお問合せください。

投稿者プロフィール
取締役副社長
中澤 博明
大学卒業後、神戸の百貨店で外商を9年間経験した後、阪神大震災後の建設ラッシュもひと段落した逆風の時期にも関わらず思い切って大手ハウスメーカーへ転身。
転身直後からトップセールスマンとして約11年で160棟のお家づくりに携わるという異例の経歴を持つ。
大手ハウスメーカーでの担当としての経験や管理者としての経験、そして自身の家づくりの経験をもとに、お客様の想いを形にすべく、大手から地元加古川に密着した住宅メーカーの指揮をとる。
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