SANKEN ARCHITECTS laboratory住宅にまつわる研究レポートとコラム

パッシブデザイン(自然の光と熱、風を設計する)とは???

date_range2022-11-11
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こんにちは。株式会社三建副社長の中澤です。

最近、どこのモデルハウスに行ってもパッシブという言葉をよく聞くと思います。

 

でもパッシブを謳っているものの本当の意味を理解して設計しているモデルハウスはどれくらいあるでしょうか?

そこで、今回はパッシブデザインについて書いていきたいと思います。


パッシブデザインとは?

環境用語集によると「建物の構造や材料などの工夫によって熱や空気の流れを制御し快適な室内環境を作り出す手法。

地域の気候に応じて、自然の光や日射、風を取り入れる設計により、エネルギー消費量を抑え、快適な空間を作る。」とあります。

生活に置き換えて考えると、よく言われる「夏涼しく、冬暖かい家、そして光熱費等のランニングコストを最小化する家」ということになるでしょうか?

そして、「地域の気候に応じて」ということは、地域によって手法は異なるということになります。

総合住宅展示場に行くと、ヨーロッパやアメリカからの輸入住宅等たくさんの工法やコンセプトによってモデルハウスが建てられています。

ヨーロッパやアメリカと日本の気候では、温度や湿度、日射量、降雨量等々大きく違います。

にもかかわらずヨーロッパやアメリカの工法や仕様を持ってきて、日本の気候風土にあった建物が建てられるでしょうか?

例えば、一時期施工が簡単でコストが安く耐震性能が高いというふれこみで2×4工法が日本でも多く建てられた時期がありましたが、2×4工法は北米等を中心に多く建てられてきた工法ですが、密閉性は高いのですが、日本では高温多湿のため壁体内結露の問題が発生し最近はずいぶん減ってきたように思います。

 また、ヨーロッパでは断熱性能にこだわった建物が多く樹脂のトリプルガラスが主流になっていますが、日射量が日本と比較すると1/4~1/5程度しかありません。 

これくらい気候風土が違うため同じ建物がその地域の気候にあっているか?というと疑問が残るところです。

日本国内でみても、兵庫県の家と北海道の家の建て方は異なり、基準も違います。それくらい地域によって気候風土は違うため、パッシブデザインの設計手法も自ずと違ってきて当然だと思います。

そのため、兵庫県であれば兵庫県に合ったパッシブデザインを行っていかなければタイムリーな建物は建てられないということになります。

兵庫県にあったパッシブデザインとは?

それでは、日本に合ったパッシブデザインとはどんなものでしょうか?

①一般家庭のエネルギー消費量は、冬場最大化するため、先ず、日射量が多いということを考えていくと冬場の日射を最大限取得することが第一。

②次に夏場の日射を遮蔽すること。

この2点が最重要になってくると思います。

冬場の日射取得を最大限にするには、南の開口率(外壁に対しての窓の面積の割合)を大きく取って、窓の種類を日射取得型ガラスにする等の方法が考えられます。

また、夏場の日射取得を最小限にするには、窓の外側に外付けブラインドやシェードをつける方法が考えられると思います。

他にも、軒を出したり庇を出すということも考えられますが、相当出さなければ効果は出ないため、現代の建物では外付けのブラインドやシェードの方が現実的かもしれません。

内側にハニカムブラインド等で遮蔽する等が考えられます。

日本の特徴的な気候を念頭に置いて

日本は、ヨーロッパに比べて日射量4~5倍あり、更に四季があり高温多湿なのも特徴です。 

したがって、日射を活かすということを大前提に考える必要があります。

そして出る熱と入ってくる熱のバランスも大切です。 

必要以上に窓(サッシ)の断熱性能を上げると熱は出にくくはなりますが、入ってくる熱も減ることになります。 

日射量が少ないヨーロッパであれば出ていく熱を抑えることが最重要ですので樹脂のトリプルサッシというのは理にかなっていますが、兵庫県(日本)では出ていく熱と入ってくる熱の最大化を狙っていかなければなりません。

その結果、兵庫県ではアルミ樹脂の複合サッシで複層ガラスの方が熱の出し入れを最大化できる可能性は高いと思われます。

このパッシブデザインを駆使したモデルハウスを、加古川のママドリモデル高砂の家稲美の家姫路の日和の家で展開しております。ぜひご体感ください。

これらのモデルハウスでは、南のガラスは日射取得型、東西北側のガラスは日射遮蔽型と方位によってガラスの種類を変えています。 

ご不明な点は、わたくしにでも構いませんので、お気軽にお尋ねくださいね。

三建のパッシブデザインにおける設計基準

以下、我社のパッシブデザインの考え方をまとめたものを抜粋してご紹介いたしますので今後の家づくりの参考にして頂けたら幸いです。

姫路市・加古川市の場合の設計

 〇南面⇒複合サッシ・日射取得型ガラス+外付けの日除け、軒は出しすぎない

 〇東・西面⇒複合サッシの日射遮蔽型ガラス

 〇北面⇒樹脂サッシ・日射遮蔽型が熱的には有利かつ窓面積の比率を極力南面に持っていく。

注意)日射取得型・日射遮蔽型でガラスの色が変わります。

 *Q値 1.9以下

 *UA値 HEAT20 G2クリア 0.46以下

 *ηAC 1.0以下(日射遮蔽性能)

 *ηAH 2.5以上 (ただし、窓が大きくなると数値は下がる)

 *南面の窓面積比⇒20%以上(大きければ大きいほど良い)

 *外付けブラインド・外付けシャッター・ハニカムスクリーン+軒・庇の4点セット

 *全方位通風の確保・ウインドキャッチャー・高窓(高断熱ほど夕方以降に熱がこもりやすくなる⇒廃熱)の活用

 *採光・導光(できるだけ奥に導く、吹き抜け・欄間・ライトシェルフ・ライトウエル・ライトコート)

 *太陽の動きにより夏と冬では南面・東西面に入ってくる熱量は逆転する。

 *周辺建物等の影響を見ないでパッシブデザインを行うのはあり得ない。

  

パッシブデザイン設計における考え方

パッシブデザインは窓が肝。

「断熱」は冬の基本、「日射遮蔽」は夏の基本

*パッシブが目指すものは「冬温かい」「夏涼しい」「風が通る」「明るい」が実現する設計手法=お客様が望むものである。

*「高断熱」はお客様が望む住まいの一部しか実現しない。

 また「夏涼しい」を保証できない。

*安易な高断熱は、窓が小さくなり「冬の日射取得」「風が通る」「明るい」を失う。

*トリプルガラスは日射取得率が悪い

*全館空調(全館連続暖冷房)は居室完結暖冷房と比較して圧倒的に電力消費量は増える。

*熱性能の基本三大数値

        UA値⇒外皮平均熱貫流率(小さい方がが良い)

        ηAC⇒冷房期の平均日射熱取得率(小さい方が良い)

        ηAH⇒暖房期の平均日射熱取得率(大きい方が良い)

*入ってくる熱量と出ていく熱量は姫路市の冬の南面で考えるとエルスターX(樹脂サッシ)よりもTW(複合サッシ)で日射取得型が有利


いかがですか?

パッシブ設計における不明点や気になる所があれば、わたくしでも構いません。

お気軽にお問合せください。

パッシブ設計や四季を感じることのできる家づくりについて分かりやすくお伝えいたします。

投稿者プロフィール
取締役副社長
中澤 博明
大学卒業後、神戸の百貨店で外商を9年間経験した後、阪神大震災後の建設ラッシュもひと段落した逆風の時期にも関わらず思い切って大手ハウスメーカーへ転身。
転身直後からトップセールスマンとして約11年で160棟のお家づくりに携わるという異例の経歴を持つ。
大手ハウスメーカーでの担当としての経験や管理者としての経験、そして自身の家づくりの経験をもとに、お客様の想いを形にすべく、大手から地元加古川に密着した住宅メーカーの指揮をとる。
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